Amazonが中国EC市場から撤退する理由とは?最新の中国EC市場事情

2019.10.14 日本美食
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中国EC市場を徹底解説

-2019 China Conference Vol.3イベントレポート-
本記事は、第3回China Conference「-検索しても出てこない、中国ユニコーン企業解説 EC編-」の内容を書き起こしたものです。

目次:
なぜアマゾンは中国から撤退するのか?
中国のEC市場で勝ち残るための2つのキーワードとは?
淘宝網(タオバオ)がAmazonと決定的に違うのは「副業モデル」
ビッグプレイヤー、淘宝網(タオバオ)に迫る脅威
今後、「EC」という概念は消える可能性が高い

 

なぜアマゾンは中国から撤退するのか?

スタイラー代表取締役、小関 翼(以下 小関)と日本美食株式会社CEO董 路(ドン ルー、以下 路)によるトークイベント第三弾「China Conference -検索しても出てこない、中国ユニコーン企業解説 EC編-」は、淘宝網(タオバオ)やJD.com(ジンドン)、そして昨年上場した拼多多(ピンデュオデュオ)などのECプラットフォームがテーマ。2019年9月24日(火)にEDGEof 渋谷にて開催されました。

本カンファレンスではAmazonがなぜ中国のEC市場で失敗したのか、そして、中国のEC市場がなぜ世界で注目されるのか。さらに中国を筆頭にこれからのアジアのEC市場がどう移り変わるのかといった内容が語られました。

Eric:
今日でChina Conferenceは3回目です。今回はスタイラーの台湾事業を統括している私エリックがモデレータを務めさせていただきます。よろしくお願いします。

それでは早速一つ目のテーマに行きましょう。一つ目は、「なぜアマゾンは中国から撤退するのか」です。今年の4月に米国発の大手EC事業者アマゾンが中国からの撤退を発表しました。

小関:
日本はEC市場の一角をアマゾンが占拠しているので、日本人から見ると結構ショッキングなニュースかもしれませんね。また、よく言われるように、中国が外資系企業にとってアンフェアな市場だから、撤退に追い込まれたと思っている人も多いかもしれないんです。まず、最初にAmazonで働いていた僕や、中国でECビジネスを展開されていた路さんの両面から話せれば。

路:
そうですね、僕からは撤退に至る中国ECの歴史的経緯の話をしたいと思います。AmazonはJoyoというECの企業を2004年に買収して中国に進出しています。Joyoは当時の中国のEC市場ではTOP3に入る会社です。

小関:
実を言うと、Amazonはそもそもチャレンジャーとして中国に進出したわけではなく、大手企業を買収して進出しているんですよね。弱者というよりむしろ強者としてのポジションです。

路:
そうですね。中国EC市場で存在感のある企業を買収して一気に攻めようという戦略からAmazonも買収を進めたんですよね。一方、アリババは、まだBtoB向けのイエローページの印象が強く、C向けのEC企業という印象はないです。そのアリババが、中国に進出したAmazon、eBayに対抗しようとして作ったのが淘宝網(タオバオ)です。

結果、進出から15年後の2019年にAmazonは撤退に追い込まれました。撤退時のマーケットシェアは1%にも満たないです。ただ実は、日系の楽天やZOZOももっと前に撤退に追い込まれています。むしろAmazonは中国市場に踏みとどまっていた方なんですね。背景にはもちろんアリババとの競争があります。

 

中国のEC市場で勝ち残るための2つのキーワードとは?

 

小関:
会場には、あまり淘宝網(タオバオ)を使ったことがない人も多いかと思うので、今日は淘宝網の話もしながら、淘宝網(タオバオ)とAmazonの違いなどについてもお話できればと思います。

例えば、社会背景も違いますね。日本・アメリカにおいて消費社会が成熟してからECが普及しているので、購入した商品がちゃんと届くというのが普通です。一方、当時の中国での淘宝網(タオバオ)はマーケットプレイスを提供していたので、「買ったものが届かない」、「お金を振り込んだのに連絡が取れなくなった」などのトラブル、商品に関して売り手と買い手の認識のギャップも大きくあるので、取引をする上で信頼を形成するのが非常に重要です。

路:
中国に進出した日米のEC事業者が失敗している理由のほとんどと言っていいですね。中国EC市場における成功のキーワードは「信用」と「決済」の2つがあげられます。淘宝網(タオバオ)は現在、中国のECの約8割を占めているサービスですが、この2つの理由なしでは、市場で勝つことができなかったのではないかと考えています。

中国EC黎明期は根本的に写真通りのものがくるかどうかなんて分からなかったんです。商品詳細ページにメッセージというボタンがあるんですね。実際に商品説明文を読むよりも、メッセージで商品について聞くことが多い。ユニクロやサムスンという大手にメッセージで問い合わせても1分以内に返答がくるんですね。

taobaotaobao_message

このようにメッセージで商品や納期について気軽に聞くことができるという点も「信用」というキーワードに紐づいている感じがしますね。

 

小関:
あとは、決済の部分ですね。遠隔地での商取引において、お金が先か、物が先かというのは、非常に重要な問題です。

chinaconference

 

路:
そうです。これを見事に解決したのが支付宝(アリペイ)のエスクロー決済というものです。取引の第三者であるアリババが介在して、商品の送付が確認できてから送金をするというスキームが必要だったんですね。支付宝(アリペイ)も、日本ではオフラインの店舗で使える決済サービスのイメージが強いですが、淘宝網(タオバオ)を成功させるための手法として生まれたんですよね。淘宝網(タオバオ)創業者のジャック・マーも開発した当時は、今のような使われ方は想定していなかったと思います。

小関:
一方で、Amazonは進出地域に対して特殊な機能やデザインを持つのに消極的です。撤退時でもコミュニケーションやエスクローを提供していたわけではないです。これは、ビジネスの根幹と結びついています。

Amazonは自身を普遍的なサービスプロバイダーだと自負しています。Amazonは自社を、「地球上で最もユーザーセントリックな会社」だと掲げていて、そのユーザーセントリックとは、「安く(Price)」「多くの種類の商品から(Selection)」「便利に(Convenience)」買えることから構成されています。もちろん、1990年代の米国が背景にあります。カタログ通販を検索できれば良いので、コミュニーケーションや決済などはあまり考慮されないんです。

amazon

amazonの画面

また、中国や他のアジア諸国が成長すると、スマートフォンしか持たないユーザーが大量に発生します。結果的にモバイル最適化したような体験が、米国よりも中国で出てくるんですね。例えば先ほどのメッセージ機能もそうですし、淘宝網(タオバオ)のUIはSNSのようなインターフェースを採用していますね。検索させるというよりは顧客データに基づいて商品を提案してくれます。

 

淘宝網(タオバオ)がAmazonと決定的に違うのは「副業モデル」⁉️

Eric:
なるほど、中国のその他のECプラットフォーム企業の成長にはどんな要因があるのでしょうか?

 

路:
そもそも淘宝網(タオバオ)のビジネスモデルは根本的にアマゾンと異なっています。Amazonは仕入れとプラットフォーム利用料を供給者から獲得するビジネスです。一方、淘宝網(タオバオ)は、プラットフォーム利用料は無料。これを初期から成立させたんですね。成長するに従い、流通が増加し、より供給側の競争が激化した結果、プラットフォーム内の広告販売が可能になるんです。つまり淘宝網(タオバオ)は広告ビジネスなんです。

あとは、支付宝(アリペイ)のキャッシュフローです。支付宝(アリペイ)がユーザーからお金を受け取って、販売者に送金するまで約一週間。この一週間の間、約30兆円の資金が預かり金として滞留するわけです。つまり流通の本業で勝負しないで、副業の広告、決済などで勝負したんです。

 

ビッグプレイヤー、淘宝網(タオバオ)に迫る脅威

 

Eric:
逆に淘宝網(タオバオ)にとっての今の脅威はなんなのでしょうか?

 

路:
面白いのが、併多多(ピンデュオデュオ)です。2015年創業のEC企業ですが、既に時価総額では百度(バイドゥ)を追い抜いています。また、JD(ジンドン)はAmazonのコピーですが、流通金額を大きく伸ばしています。JD(ジンドン)はとにかく安い、物流が早いというのが特徴です。所得が上がり、淘宝網上で複数のセラーを比較して、コミュニケーションしながら購入するのが面倒臭いと思うユーザーが使い始めることで一気に興隆してきた印象ですね。

JD

JDの画面

 

小関:
少し併多多ピンデュオデュオ)に話が移りますが、先ほど話に上がった中国の消費の高度化に伴って、もともと淘宝網(タオバオ)での個人間取引をしていたユーザーが、上位の天猫(テンマオ)やJD(ジンドン)に流れてきました。取り残された下の層を埋めるように出てきたのが併多多(ピンデュオデュオ)ですね。

併多多

併多多の画面

 

路:
所得のピラミッドの下に位置する消費者にアクセスすることで、ここまでマーケットを広げることができるとは思いませんでしたね。あと重要な点は、併多多(ピンデュオデュオ)の成長を支えているのは微信(WeChat)です。つまりユーザーが一つの入り口から商品を探すのではなく、ユーザーがメッセージアプリ(SNS)を利用して商品を紹介しあう分散型の集客を実現しているんです。時間はある一方で、そこまで所得が多くないシニア層に向けて、野菜の集団購入を安価で提供することで微信(WeChat)上のメッセージグループで拡散したんです。

donglu

 

(ここで参加者から質問)
参加者:
もしも、中国での越境ECをするならば、モール型かいいのか?それとも自社ECがいいのか?

 

路:
中国のEC市場とアメリカや日本で圧倒的に違うのが、中国には自社ECサイトが存在しないことです。シンプルにモール型の方がオンラインのトラフィックが多いです。また、自社ECにトラフィックを連れてくるのも非常に高額なので、自社ECは上手くいきません。

小関:
そういえば、ユニクロなどの集客力のあるブランドも天猫(テンマオ)上の公式ページを構えていましたね。加えて、自社ECが厳しいのはアジア全般に共通するかと思います。おそらくPCではなく、いきなりスマホしか使わないユーザーしかいないので、ユーザーも基本的にはブラウザ上のウェブページではなく、ECモールのAppを利用するか、SNSやMessage Appを通してブランドとコミュニケーションします。どちらもプラットフォームなので、結果的に自社ECが参入する余地が極めて小さいのかもしれませんね。

tmall

天猫の画面

 

 

今後、「EC」という概念は消える可能性が高い

 

Eric:
最後に中国EC市場の現在と今後について聞きたいと思います。ジャック・マーが2016年から提唱しているように、純粋なECは消えていくという「ニューリテール」が話題になっている中、お二人の見解はいかがですか。

 

小関:
大きな枠組みで話すと、中国の小売は常にアップデートされています。可処分所得や消費が常にアップデートされると、いつものモノを買うというよりも、消費者がより良いもの、新しいものを求めるようになります。

いわゆるミドル層が淘宝網(タオバオ)のみでの消費で満足するはずは当然ないです。むしろ、ミドル層の増加に合わせて、増えてくるのがオフラインでの流通に注目が集まっています。

例えば、アリババが運営するニューリテールで有名な盒吗鮮生(フーマー)は、一般的なスーパーマーケットと比較すると、かなり高額なものを販売しています。

路:
例えば、日本ではTiktokで有名な今日头条(Toutiao)のような企業があります。元々、今日头条(Toutiao)はニュースアプリの会社で、Tiktok以外にもノウハウや技術を生かして多くのアプリを運営しています。この会社は公表していないだけで、実は複数のバーティカルECを運営しています。

toutiao

今日头条(Toutiao)

まとめると2点ですね。
一つは、今後ECという言葉がなくなるということ。10年後はオールドなリテールとECが融合してニューリテールという概念が普及すると考えています。購入においてはオンラインもオフラインもチャネルの一つでしかない。

二つ目に、これは「中国でしか起こらない特殊な事象ではない」ということです。他のアジア諸国でも中国のコピーキャットが多く生まれては成功しており、今日話したマクロトレンドは普遍的なものだと考えています。

china_ec_matome

 

小関:
このイベント自体3回目なのですが、一貫しているメッセージは中国の企業が特殊なのではなく、スマートフォンによる情報環境の変化や、所得の変化に伴うビジネスの誕生や変化は、日本にとっても無縁ではないということですね。

 

今回はECをテーマにしていたので、バズワードが多いわけでもないですが、歴史的に辿りやすいと思います。例えば、モデレータのEricが出身の台湾だと、Amazonや楽天のポジションにあたるPC HOME とYahoo! Shopping Taiwanが市場を寡占していた状況から、ここ3年で淘宝網(タオバオ)のコピーモデルのShopeeが市場を奪っています。

 

二人のディスカッションでは、今回のテーマであるEC市場も「中国ならではの特殊なEC市場という訳ではなく」、スマホシフトした社会では同様な現象が起こると話す。

今後ともChina Conferenceを通して、ビジネスや海外進出に役立つ情報を提供していきます。

China Conferenceはスタイラー株式会社と日本美食株式会社の共同運営で、完全招待制の「China Conference」グループを運営しております。ご興味がある方は、当社までご連絡ください。

(招待は審査制となりますので、あらかじめご了承ください。)
 

▼お問い合わせ先
https://www.japanfoodie.jp/contact/

タグ : ChinaConference
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山口耕平

日本美食のマーケティング担当。デジタルマーケティングに関する2冊の書籍を執筆。2019年8月にはキャッシュレスに関する書籍も出版 https://amzn.to/2N1e8ej